体の中から元気なる腸内環境づくり! キーワードは「酪酸」と「キウイフルーツ」 

新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、東京都をはじめ日本全国で不要不急の外出を自粛するよう求められています。人の動きを制限する感染症対策が本格化する一方で、自己の免疫力・抵抗力を上げることも大事な感染症対策です。30年にわたり4万人以上の腸を診てきた消化器病専門医に、免疫と密接な関係がある腸内環境について解説いただきました。

腸内環境と免疫の関係

「腸にはたくさんの免疫細胞が集まっており、腸内環境と免疫には密接な関わりがあります。善玉菌が食物繊維をエサとして食べることで作り出す“酪酸”をはじめとする短鎖脂肪酸には、免疫細胞を活性化させる作用があり、免疫力アップにつながるといわれています」

スイスとオーストラリアの共同研究では、酪酸はインフルエンザの症状を軽減する可能性があると報告されています。

インフルエンザの感染前から継続して酪酸を与えられたマウスは、ウイルスに対する防御機能が活発に働いたことでその症状が軽減されたそうです。

酪酸を生み出す善玉菌のエサになる発酵性食物繊維

「善玉菌は食物繊維を分解し、健康増進に有効な“酪酸”を始めとした短鎖脂肪酸を生成します。この一連のしくみを『腸内発酵』といいます。短鎖脂肪酸が増えると、腸内の酸性度が高まり、ビフィズス菌などの善玉菌は棲みやすく、悪玉菌は棲みにくい環境になります。また、酪酸は整腸効果を高めたり、免疫システムを正常に機能させたりと、全身の健康維持に深く関係しているのです。しかし酪酸は口から摂取しても腸に届かないため、食材を摂取することで腸内で直接つくるしかありません」(消化器病専門医)

キウイフルーツは栄養豊富で発酵性食物繊維を含む

酪酸を生み出す善玉菌。善玉菌のエサである発酵性食物繊維を含む食材として、消化器病専門医はキウイフルーツをおすすめしています。

主要な17種類の栄養素がどれだけ含まれているかを比較した栄養素充足率スコアでも、キウイフルーツはトップクラス。ビタミンCはもちろん、カリウムやアクチニジンなども含むバランスのいい果物です。

ヒトの生活環境にできるだけ近い状態で行なった試験管実験では、グリーンキウイで酪酸産生菌アクノスビラが増加し、ゴールドキウイでは抗炎症作用を有す可能性のあるアッケルマンシアが増加しました。

つまり、キウイフルーツに含まれる繊維及びポリフェノールが腸内フローラ(腸内細菌叢)の代謝を調節するために重要な役割を果たしているのです。キウイフルーツの成分は腸内環境の代謝に有意な変化をもたらし、人体の健康に好影響を及ぼす可能性があります。

巣ごもり生活と寒暖差のダブルパンチで便秘に?!「不腸」に効果的な、ある食べ物とは?

梅雨に入り、寒暖差を大きく感じる季節に。気象庁の発表によると、今年の夏は平均気温が高いとされ、梅雨明けは例年以上に寒暖差が起こるとも予想されています。

そんな寒暖差が多い季節に気を付けたいのが“便秘”です。30年にわたり4万人の腸を診てきた腸のスペシャリストである専門医は、気温や気候の変化が激しいと“季節性不腸”によって便秘や慢性便秘が悪化しやすくなると指摘します。

梅雨明けに注意したい“季節性不腸”や、新型コロナウイルスの流行による巣ごもり生活で体調を崩す“巣ごもり不腸”、その対策ついて専門医に解説いただきました。

寒暖差10℃で”寒暖差不腸”に要注意!

「寒暖差が激しい季節は、私のクリニックでも便秘の症状を訴えてくる患者さんが急増します。1年中通院してくる慢性便秘症の患者さんも、急に気温が上昇したりすると排便力がさらに低下し、腹部膨満感、硬便などのつらい症状を訴えてきます。

”巣ごもり不腸”にも注意が必要

また、巣ごもり生活による活動量の低下、食事摂取量の減少、ストレスの増大が“季節性不腸”と組み合わさり、便秘を訴える患者さんも増えています。

また、栄養バランスが乱れ、食物繊維の摂取量が減少して便秘の症状を訴える方も。普段とは異なる生活のストレスにより自律神経が乱れ、腸内環境の悪化につながる場合もあります」

”季節性不腸”にキウイフルーツ

こうした“季節性不腸”による便秘の改善を助けてくれる食べ物として、専門医はキウイフルーツをおすすめしています。

食物繊維が豊富に含まれているだけでなく、ビタミンやカリウム、アクチニジンなども含む、高栄養素でバランスのいい果物です。

「被験者にキウイフルーツ2個を1日2回(計4個/日)食べさせたところ、排便頻度、柔らかい便が増加したという海外の研究結果があります。私のクリニックに、下剤を服用すると下痢になりやすく、かといってまったく服用しないと排便が困難になるという患者さんがいました。そこで、朝食時に他の食べ物を減らし、3個のキウイフルーツを摂取するよう勧めてみたところ、硬かった便が通常便になった事例もあります」

“季節性不腸”で気を付けたい“便秘”。夏の暑さで食欲が湧かず、栄養素が偏りがちになっている食事メニューに、栄養・食物繊維が豊富なキウイフルーツを取り入れてみてはいかがでしょうか?