難聴を放置すると「えっ」、認知症に!? 働き盛り世代が知らない「聞こえ」と脳の密接な関係

聴力の衰えは、早ければ40代から始まると言われていますが、日々の生活のなかで実感するのが難しく、かつ高齢になってからの問題という思い込みがあるため、なかなかチェックする機会がありません。

今回の調査により、オンラインアプリの「きこえのチェック」を受けて、「耳老化が始まっているかもしれないと思った」方は8%。さらに日々の暮らしで「数人で会話をしている時、聞こえていなくて自分だけ会話についていけないことがある」と感じている方は9%もいることが分かりました。つまり、40-50代でも約1割弱の方で衰えが始まっていると言えるでしょう。

さらに調査では、この先老化が進んでほしくない部位をたずねたところ、肌や眼を抑えて「脳」と答えた方がトップになりました。「聞こえにくくなると、認知症のリスクが上がることを知っていますか」という質問に対しては、知らない方が約7割も。このことから「難聴は認知症のリスクのひとつである」ということが、まだまだ認知されていないことが分かります。

「音を認識して情報を理解するために、私たちは脳の広い部分を使います。難聴によって脳を使わなくなると、脳の側頭葉という音の情報を司る部分も劣化していきます。コミュニケーションも減り、脳の機能は次第に広く低下していくと考えられます」

最新の研究でも、聞こえの低下が認知症と関係していることが明らかになってきています。2017年の国際アルツハイマー病会議で「認知症症例の約35%は潜在的に修正可能な9つの危険因子に起因する」と発表し、難聴がその1つに指摘されています。

「うつ、社会的孤立、運転能力の低下など、難聴の影響は数多く報告されています。聞こえの低下に対して、早めに対策をとることが認知症予防にもつながると期待されています」

老眼と同じように、加齢性難聴は現在のところ治すことはできませんが、予防としては主に2つが挙げられます。

1:騒音環境を避けること

…大きな音を長く聞くことは蝸牛細胞が疲れ、聴力の機能低下につながります。

2:悪化要因と言われる動脈硬化を防ぐこと

…食生活や運動などの生活習慣を整えるなどして、動脈硬化の予防を心がけることも大切です。

「認知症を防ぐためにも一番勧めたい対策は、難聴を放置せずに補聴器を使用することです。補聴器を正しく装用すれば脳の劣化を防ぎ、認知症を予防する可能性があると考えます」と専門家は語ります。